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2026.09.24
バイオリン
指板の話
巨匠のこだわり
巨匠の工房でのこと。
お客様のバイオリンの指板の交換をするため、用意していただいた新しい黒檀の材料をカンナで削っていました。
「なんて硬いんだ — ! 」
当時、すでに指板の交換修理は幾度となく経験をしていた私ですが、これほど硬い黒檀は初めてです。カンナの刃は砥ぎたてです。それなのに、刃が材料の上を滑るのです。
ひと削り、ふた削りすると、カンナの刃はすぐに切れなくなります。そのたびに刃を砥ぐ。削っている時間よりも、カンナの刃を砥いでいる時間のほうが長いくらいです。
そんなこんなで汗だくになりながら、ようやく指板の材料を削り終え、やっとの思いで巨匠から合格をいただきました。
床の上に置かれた段ボール箱の中の、指板の材料の束が、目に入りました。
「いったい、どこの山で刈り採ってきたんだ … 」
巨匠は、有名な修理職人であると同時に、世界的な楽器製作家でもあります。当然のことながら、材料や素材へのこだわりは徹底しています。
ふと机の上の巨匠愛用のカンナの刃を見ると、妙に黒光りしていることに気付きました。
「あの — その刃は特注ですか ?」
お尋ねすると
「 …… みんなで注文して作ったんだ …… 」
やはり巨匠は、道具へのこだわりも並々ならぬものがあります。
そういえば、今までに私はあの黒光りしたカンナの刃を使っている先生や先輩を、一度も見たことがありません ……
